シドロモドロな日記 〜小説とかエッセイとか〜

【感想005:山川方夫:博士の目】

【山川方夫】博士の目

 あらすじ
  私はマックス・プランツ研究所で不可思議な能力を持つ老ロレンス博士に出会った。短編。

 感想
  作者の名前は”やまかわまさお”と読む。あの『夏の葬列』を書いた人だ。僕は夏の葬列よりもこっちの『博士の目』の方が好きだ。雰囲気小説とでもいうのか、独特の幻想的な雰囲気がある。まず研究所の雰囲気がいい味を出している。

 研究所の門を入って、私は呆れて立ち止まった。――(中略)――……だだっぴろい曇った空の下に、小さな赤煉瓦造りの粗末な母屋が一つと、温室が一つ、物置のような小舎が一つ、それぞれがひどく古めかしい外観をみせて点在して、ただ、それをとりまく疎林と畑地にある平坦な敷地だけが、ひろびろとどこまでもつづいている。それが、有名な「マックス・プランツ」の全景なのであった。

 研究所ではさまざまなことが行われていて、その一つに家鴨の研究がある。敷地にある大きな池にはたくさんの家鴨が放されている。博士は独自の慧眼でその家鴨たちの家族構成や交友関係を把握している。それは誰にもまね出来ない異能である。
 この博士の「家鴨を見るときの目」が物凄い雰囲気なのだ。読んでいて思わずちぢみあがる気持ちがする。何度読み返しても、博士の目の描写にはぞくぞくさせられる。人間離れした老ロレンス博士の観察眼は物凄い凄みを帯びて主人公を圧巻する。そして博士の慧眼に見入った主人公に戦慄の事件が起こるのだ。

……読んでいると、どうもロレンス博士のイメージがあのヴェルタースオリジナルのCMのおじいさんとかぶってしまう。「特別な貴方にプレゼントです」とか言って白衣のポケットからおもむろにヴェルタースオリジナルを一つまみ取り出してきそうな気がする。きっとロレンス博士はそんな素敵なおじいちゃんだと思う。


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