【佐藤春夫】のん・しゃらん記録
あらすじ
地下300メートルという都市の最下層にいた私は【薔薇】という植物になった。短編。
感想
文豪の書いたSFだ。しかしこれが発表されたのは昭和4年だから80年くらい前のことになる。そんな昔にこういうサイバーパンク的な世界を舞台にした作品があるのは不思議な感じがする。
作者、春夫は詩人だ。散文詩をよく書いた。作品の中でも登場人物に詩人が多い。あるいは詩的なことを言う人物が必ず一人はいる。物語としてだけでなく、散文詩としても春夫の書く小説は面白い。表現にユーモアがあり、解釈に広がりがある。それはたとえば
「お前は月といふものを知つてゐるか」
「お前は星といふものを知つてゐるか」
「お前は虹を知つてゐるか」
「小鳥たちを――夜鴬を知つてゐるか」
「黒土の芳ばしいにほひは?」
「泉の囁きは?」
「夜の露は?」
「少女の接吻は?」
これは薔薇にされた主人公が何かに問い詰められる場面だ。遥か未来では植物はほぼ絶滅しており、主人公は太陽すらろくに見たこともない。全ての問いに、主人公は答える術もなくただ、じっと黙っているしかないのである。はじめ、主人公は薔薇になったことを喜んだが、たびたび何ものかが主人公を問い詰めその幸福感を削いでいってしまうのだ。
古いけれど、とても面白く含蓄のある話だからぜひ読んで欲しい。SFが好きなら、一読の価値ありと僕は判ずる。
……読んでいて「BLAME!」という漫画を思い出した。サイバーパンクの漫画だ。これについても、感想を書いてみたいと思う。
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地下300メートルという都市の最下層にいた私は【薔薇】という植物になった。短編。
感想
文豪の書いたSFだ。しかしこれが発表されたのは昭和4年だから80年くらい前のことになる。そんな昔にこういうサイバーパンク的な世界を舞台にした作品があるのは不思議な感じがする。
作者、春夫は詩人だ。散文詩をよく書いた。作品の中でも登場人物に詩人が多い。あるいは詩的なことを言う人物が必ず一人はいる。物語としてだけでなく、散文詩としても春夫の書く小説は面白い。表現にユーモアがあり、解釈に広がりがある。それはたとえば
「お前は月といふものを知つてゐるか」
「お前は星といふものを知つてゐるか」
「お前は虹を知つてゐるか」
「小鳥たちを――夜鴬を知つてゐるか」
「黒土の芳ばしいにほひは?」
「泉の囁きは?」
「夜の露は?」
「少女の接吻は?」
これは薔薇にされた主人公が何かに問い詰められる場面だ。遥か未来では植物はほぼ絶滅しており、主人公は太陽すらろくに見たこともない。全ての問いに、主人公は答える術もなくただ、じっと黙っているしかないのである。はじめ、主人公は薔薇になったことを喜んだが、たびたび何ものかが主人公を問い詰めその幸福感を削いでいってしまうのだ。
古いけれど、とても面白く含蓄のある話だからぜひ読んで欲しい。SFが好きなら、一読の価値ありと僕は判ずる。
……読んでいて「BLAME!」という漫画を思い出した。サイバーパンクの漫画だ。これについても、感想を書いてみたいと思う。
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