シドロモドロな日記 〜小説とかエッセイとか〜

【感想003:谷崎潤一郎:文章読本】

【谷崎潤一郎】文章読本

 あらすじ
  きれいな文章の書き方を教えてくれているとても良い本。理系にもお勧めしちゃう。

 感想
  読書が趣味で谷崎潤一郎を知らないという人はダメだ。僕はついこの間まで知らなかったからダメだ。もしあなたが知らなかったなら知るべきだ。
 正直、谷崎さんの文章は作品を追うごとにすごく変化している。初期と晩年とでは全然違う文章になっていてびびる。この本は後期の文体、簡潔にして明瞭な文章について多く説明している。タメになるようなことをいくらかピックアップしてみる。

>>1.口に出して読んでもすらすら出てくるような文章であること。

 ふつうの人は黙って本を読む。ニヤニヤしたりしかめっ面したりしてもあまり声は出さない。でも、頭の中では文章が音声として再生されている。僕らは無意識的に声をイメージする。だから口にすらすら出てこない文章というのは頭にも入りにくい。いわゆる文の調子である。どんなんがいいのかというと、散文詩みたいなのがいい。散文詩を研究するとどういうテンポが耳に残りやすいか分かってくると思う。僕は詩集をひとつ持ち歩いている。それを読んでニヤニヤしたりしかめっ面になったりする。


>>2.分かりやすい言葉を選ぶこと。

 むずかしい二字熟語はあまり使わないように心がける。日本語は類義語がとても多い。むずかしい表現を探すときりがない。あまり変にむずかしい言葉を用いるより親しまれた言葉をつかうほうがいい。そのほうが伝わりやすいし読者が想像できる幅が広がったりもする。これは語彙を縮めろと言っているのではなくて、いたづらにむずかしい言葉で塗り固めるのは返ってバカっぽくも見えるし読みにくいからやめろと、そういうことだと思う。だけど、歴史小説や伝記物なんかだと難解な熟語が幾つあっても気にならない。作品の雰囲気にあわせた言葉のチョイスがあるということだと思う。僕は普段の会話で文章語が出てきて「お前言葉おかしいぞ?」と言われたりする。バーチャルとリアルの区別がつかなくなっているのかもしれない。


>>3.大げさな書き方をしない。

 たとえば主人公が失恋したりする。そこで
「失恋は彼の心をズタズタに引き裂き、彼は気が狂いそうなほど歎き悲しみ、血も枯れるほど涙を流した」
とか大げさに書いてみる。この文章から伝わってくるのは情景の描写だけで、あまりに過剰な演出は読者の共感を失ってしまう。こんな絶望のどん底を経験したことのある人間なんてそうそういない。「悲しい」という気持ちは分かるけど、でもふつうはここまで共感できない。むしろ文脈によってはウソ臭くなる。書きすぎには注意したいと思う。
…………もしも血も枯れるほど涙を流すような悲惨な目に遭った人がいたらごめんなさい。



 とか、他にも色々と分かりやすく、文豪の名文なんかを引用して説明してくれている本だ。僕はこの本の影響を色濃く受けている。あと佐藤春夫とかの影響もすごい。佐藤と谷崎とは面白い関係があるのだけれど、めんどくさいのでまたの機会に書ければ書こうと思う。


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