シドロモドロな日記 〜小説とかエッセイとか〜

世にも奇妙なお前

 二十歳を過ぎた僕に対して姉は言う。

「Mさんはアキラよりアホやわ」

 Mさんとは姉の彼氏さんのことである。
 彼氏さんと僕(アキラ)とは一ダースあまりも年齢が離れているのだけれど、姉はそう言ってはばからない。
 知り合って6年、つきあってX年。きっと二人は考え方とか、モノの好みとか、いろいろな違いを暴露しあっているのだと思う。それを踏まえて彼氏さんと僕とでは、僕の方が賢いと言う結論に姉は達したのだ。
 これは恐ろしいことだ。
 二十歳をこえたら皆、大人になってしまったらしい。
 Mさんも僕も、姉も母も、兄も従妹のMちゃんも。
 みんな、高校生とか女子学生とか店長とか看護師とか、そういう垣根を越えたもっと大きな概念でひと括りにされてしまったのだ。そして仕分けが済んだら続いて順位付けがはじまる。一人一人が評価をつけていく。

 「あいつよりもアキラは馬鹿だな」 「あのひとは頭がいいけど、アキラくんは……」 「アキラ君に比べてあの子はよく気が利くなぁ」 「お前は変なやつだけどいいやつだよな、奇妙なだけのアキラとはちがうなぁ」

 身の毛がよだつ。

 僕はいつのまにか、姉の中で大人の土俵入りをしていたのだ。いや、姉の中ばかりではない。そういえば最近になって「大人になったのねぇ」と親戚や近所のおばさん、出前のお姉さんによく言われる。そして決まって「立派になったのね」とか、尾ひれがついてくる。でもそれは本当に立派になったということではないのだ。単に見かけや年齢が大人になったと、そういう意味なのだ。
 ああ、きっとこれからもどんどん僕にラベルが張られていくんだろうなと感じる。そして個人がつけた僕に対する評価は一定のコミュニティの中である程度共有されて、僕というキャラ付けがなされるのだ。
 僕のキャラってどんなんだろうか?
 ちょっとラベルをめくってみても、どうしてかラベルは僕の目には見えない仕組みになっている。馬鹿には見えないラベルなのかもしれない。これはもう、かなり困った。


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