シドロモドロな日記 〜小説とかエッセイとか〜

【犬よりはかしこい】

 うちの工学教授はよくたとえ話をする。

「君たちさぁ、けっこう賢いよね。うん。見てて思うんだよ。うちの犬よりはかしこいなぁって」

 僕らはとうぜん憤慨する。犬より賢いってそりゃ当たり前だろうと、でも、なぜかちょっと嬉しくなったりするのは僕が負け犬根性だからか。

「いや、だって犬ってけっこう賢いでしょ? うちの犬はね、けっこう値が張るいい犬なんだけどね、ほら、雑種とかじゃなくって血統書付きの」

 ここでふと思った。
 僕ら人間にも雑種とか血統とかいうのがあるのだろうかと。雑種と血統書付きとの違いってどんなものなんだ? ひいひいお爺ちゃんが中国人だったりしたら、僕は雑種なのだろうか。それともひいひいひいお爺ちゃんがロシア人だったら雑種なのだろうか。
 どこからが雑種の境界なんだろう。

「まぁ、俺がね、芸を教えようとするんだけどね。なかなか言うこと聞いてくんないわけよ。一ヶ月くらいおんなじこと繰り返し繰り返し言って、やらせてようやく覚えてくれるわけ。でもさぁ、君らって一回言ったら分かるでしょ? そこのペンチ取ってっていったらすぐ取ってくれるじゃん? 『先生! ぺんちって何ですか?!』 とか聞かないでしょ? ペンチ取らせるのに一ヶ月も訓練が必要だったりしないでしょ? だからさぁ、人間って言うのはよくできてるなぁって、俺は思うわけよ」

 僕はこの教授がけっこう好きだったりする。変な話をしてくれて面白いからだ。

「だから、こういうややこしい数式(ベルヌーイの定理)見ても理解出来る頭は持ってんだからさぁ。もっと勉強しようよ。君ら」

 話の締めに叱咤してくれたりするので僕は助かったりする。僕は生来あんまり根性のない方なので、怒られたり、褒められたり、そうやって刺激されてやっと勉強する気が起きてくる。こういう刺激を与えてくれる先生が僕は好きだ。


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