小説のカズイスチカ

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DDSに代わるあたらしい選択的な化学療法?

ちょっと興味を惹かれたので→イギリスの国立研究所の発表

 どうやらバクテリアの遺伝子の反応を利用したものらしいです。バクテリアに条件反射を覚えさせて、それで選択的な行動を起こさせる、ということ。

 でも、バクテリアの遺伝子を発現させるにはシグナルとなるたんぱく質を必要とするあたり、全自動で働いてくれるわけではないもよう。遠隔操作ではなく、直接シグナルを送る必要があるようですね。逐次注射するのでしょうか。理想では標的臓器や組織の膜タンパク質に反応して行動させるのが良いのでしょうが、むずかしいですねーかなり。つーかそれじゃDDSと変わらんのでは?

 冷静に考えると、これはかなりめんどうなシステムです。バクテリアを調教しなければならないし、生体に異物、それも微生物を打ち込むことになります。そうするとやはり生体適合性や毒性ではDDSのほうが優れていて、工業化が容易な気がします。これだとDDSに代わる手法にはならないかなー? 夢はありますけどね。拷問とか生物化学兵器としての。


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【羊達の沈黙:トマス・ハリス】

【あらすじ】
 FIB訓練生クラリス・スターリングはある殺人犯に対して心理テストを行うことを命じられ、ボルティモア精神病院で檻の向こうのハニバル・レクター博士と出会う……。長編。


【感想】
 一年ほど前に読んだ本です。しかし未だに鮮烈に覚えているのはその怜悧な筆致と穿った心理描写。独特の文体と視点から紡がれる物語には作品全体に物凄い緊張感を漂わせています。
 この『羊達の沈黙』をサイコやミステリに分類する人が多いですが、これは本格の文章表現に挑んだ作品だと思います。以前のレビューで書いた『山川方夫:博士の目』にも同じような緊張感がありましたが、これはそれを凌ぐものでした。
 この異様な空気を生んでいるのは豊富に出る学術的な記載と猟奇殺人事件の捜査です。少し一部を抜粋してみますと、

“「ここへ来ることについて、私に手紙をくれたな、返事はしなかったような気がする――いや、しなかった。するべきだった」
「あなたはほかにやるべき事がたくさんあったのです」
「VI−CAPについて、知っているかね」
「凶悪犯逮捕計画であることは知っています。あなたがデータ・ベイス製作中だがまだ実用段階にはいっていない、と<法執行会報>に出ていました」”

 上の会話は冒頭の、訓練生のスターリングと上司のクローフォドとの会話です。スターリングが手紙のことでクローフォドにお気になさらずと言っていますが、次にはもう別の話題(捜査に関すること)に切りかわっています。『羊達の沈黙』の登場人物の多くは知的で切り替えが早いのです。それでいながらも、凶悪犯に対する憎悪やつまらないセクハラに対して憤慨したりします。そういった様々な感情の浮き沈みを示しており、淡々と記述される物語の中に人間味が垣間見えるのです。これは大きな特徴であり、魅力のひとつです。

 また登場人物も非常に魅力的です。文章の表現だけでなく、微細な視点から人物を掘り出していきます。たとえば、普段は気にせずに流すような人間の仕草、漂っている物のにおい、身に付けているもの、部屋の状態など、いろいろな視点からこの人物はこういう性格でこんな生活を営んでいるのだということを悟らせます。

 ストーリーはサイコスリラーと呼ばれるだけあってグロテスクだったりバイオレンスだったりするのですが、嫌になるほどではありません。人物を描く上での一種のツールのようなものでした。まぁエンターテインメント性は多分にあるのですが、無理やりこじつけたという感じはしません。すごく綺麗に物語の中に収まっていました。
 ちょっと長い小説ですが読みにくいものではないです。ぜひ読んでみてください。


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【出典】
THOMAS・HARRIS 菊池光 訳, 羊たちの沈黙 THE SILENCE OF THE LAMBS 新潮文庫ハ 8 2, 新潮社, 2007
ISBN978-4-10-216702-1

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【SFのお題:03,重力 宇宙ステーション】

2008102218260000.png
 写真はうち大学の図書館で貰ったポスター。
雑誌の付録は捨てているのか?

【SFのお題:03,重力 宇宙ステーション】

 少し古いニュースだが今年の3月、国際宇宙ステーションに日本のラボが取り付けられた。ラボは『きぼう』といってステーションの中でも一番おっきなラボらしい。無重力状態での実験を行うようだがどんな計測機器を持ち込んでいるのだろう? そうそう、計測で思い出したが宇宙船でのアースの取り方が気になる。地上なら普通に大地に電気を逃がしてやれるが、宇宙空間は真空だから電気を逃がすところがない。アースが取れないのだ。もし船内の電気平衡が崩れて余分な帯電をしても放電できない状態にある。精密な実験ではアースの取り方が重要で、1mVどころか1μVの電位のずれすら許されなかったりする。電位は相対的なものだから、絶対的にゼロ電位を取らないといけない。船内の電気管理とか漏電対策とか、いったいどうやっているのか気になるところである。人間は100mA以上の電流が流れると心臓が止まる。電気ポットのティファールの電流12.5Aなら、HzやΩを無視すれば120人以上殺せる計算になる。まぁ国際宇宙ステーションでティファールを使っているとは思えないが……
 
 いまだ建造中の国際宇宙ステーションはとても巨大だが、大半は発電・送電設備、酸素供給施設、温度管理施設などの生命維持装置で埋まってしまっている。通路の中にもパイプとコードが神経のように走っている。SFでよくあるひろびろとしたサイバーパンクなステーションとは程遠い狭さだ。と、僕は思っていたのだが、結構広いらしい。そういったライフラインにも小型化の波がきているようだ。
 狭いといえば、もっと狭いものがある。それは人間のふところというやつだ。今回はきぼうの取り付けにはアメリカが手を貸したので『きぼう』の46.7%がアメリカの使用権に移るそうである。また実験を手伝ってくれるカナダは2.3%の使用権と控えめである。この差はいったいなんだろうか?

 そういえば昔、アメリカが十万円くらいで火星を勝手に売っていたことがあった。ニュースや新聞になったが、あの話はどうなったのだろうか? だれかが当選して買ったはずだが、世界の反応やいかに?

【エドガー・アラン・ポー:対訳 ポー詩集(加島祥造編)】

【あらすじ】
 詩集。怪奇小説において日本の探偵・怪奇小説家に多大な影響を与えたエドガー・アラン・ポーの詩の対訳。長短23篇を収録。随所に書かれた注釈が丁寧で読みやすい

【感想】
 もともとポーの作品自体はそれほど多くなく、全集を出しても3〜4巻で収まってしまう。しかし、このポーの訳というは何度も繰り返されていて、明治時代からすでに膨大な訳が出ている。いったい誰の訳が一番いいのか? などというのはわかりっこない(僕は森鴎外訳のポーがすごく新鮮味があって好きです)。詩の傾向ははっきりしていて、題材としては恋人の喪失を詠ったものが多く、形式では韻を踏んだものが多いです。淡々としていながら味わい深い詩を書いています。

 で、内容について。
 これは対訳で原文との読み比べができてとても読みやすい。もともとポーはあまり難しい語彙を用いないし、文法も簡潔なものが多いから訳はあまり役に立たないかと思いきや大間違い。いちいち辞書をひいたり、当時のポーの心情を知るために文献を漁る手間がはぶけて非常に便利なそんざい。特に注釈が豊富でよかったです。


 韻文詩についてポーは自分なりの主義と考えを持ってました。詩には「音楽性」が必要だということです。語調と韻のことでしょう。それに対する努力がもっとも伺われるのは『The Raven』の大鴉だろうと思います。
 大鴉で繰り返される韻としては

“-door”     (ドア)
“-more”    (Nevermore)
“-Lenore”   (レノア(女性の名前):若くして死んだ妻(ヴァージニア)に重ねたもの)

 の-or[オア]が多く見られました。

 また、それと同時に破裂音や濁音がつく単語を豊富に用いて語調を強めています

“Aidenn”   (エデン、楽園、天国)
“laden”    (満ちている、覆い尽くされている)
“maiden”   (女性の尊称:乙女)
“Raven”   (大鴉バルカンレイブン)


 他にもいっぱいあちらこちらに V や B や D の音を散りばめていました。うるさいぐらいだぜ。


【出典】
Edgar・Alain・Poe, 加島祥造編,岩波文庫 対訳 ポー詩集 アメリカ詩人選(1) 赤306-2, 岩波書店, 2007
ISBN4-00-323062-0

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